竜とわれらの時代

竜とわれらの時代 (徳間文庫)

竜とわれらの時代 (徳間文庫)

読了。満腹です。
The S.O.U.P. (角川文庫)では、すてきな制作魂を描ききってくれた川端 裕人が、今回は恐竜発掘をネタに科学と人間のあり方について柔らかな物語を描いてくれました。
福音派イスラム原理主義者などちょっと風呂敷を広げたところも、まぁ、荒唐無稽にならない程度に説得力があるし、物語の成立度合いはS.O.U.Pよりも断然上。恐竜をはじめとする古生物の理論などはそれほど珍しいものでも新しいモノでもないので、知的興奮を期待する向きにはちょっと肩すかしかもしれないけど、オーソドックスな理論を適切にまとめていてとても好感が持てる。
絵描きの端くれとして、川端 裕人はモノを作り出す人の心を描くのが本当に上手で、読んでてうれしくなるのがいいな。S.O.U.P.でもグラフィッカー魂が発露するあたりはとてもうれしかった。そうなんだよ!!ってね。
一つだけ文句を付けたい。このページ数なら上下分冊にしてください。歩きながら片手で読めないじゃないか。

○○は世界で最も難しい××

アホかと。
こういう発言するやつは仮に日本語や将棋が最も習得の難しい言語やゲームであったとして、それを操る日本人の品性や知性がそれ以外の人々を上回っているとでも思ってるのかね。
日本語に関して言うと、日本語の習得を難しくしている原因は、(日本語が難しいと信じている)日本語を教える私たちにあるんだよ。敬語とかさん付けとか熟語とか活用とか、滑らかな日本語を教えようとするから覚えられない。
昨年訪問したフィリピンのオフィスでタガログと英語の二国語を操るスタッフに日本語を教えているのを見ていたのだが、とても実用的で習得の容易な方法を採っていた。
まず、とにかく、基本的な構文の語順を徹底的に覚える。そのあとで、最も使用頻度の高い単語から置き換えていくんだ。わからん単語は英語のままでいい。しゃべるときは、単語ごとに少しタイムをあける。「my Keyboard うごく ない です」みたいにマンガに出てくるガイジンみたいな日本語だけど、意思の疎通(といって悪けりゃこっちの指示で仕事をしてもらうには)十分である。
これなら、早いスタッフなら一週間、遅くても一ヶ月で充分日本語で仕事ができるんだわ。
短期出張の講習だったんで彼らが覚えるの待てなかったから仕事は英語で通したけど、仕事以外の時間は彼らのマンガのような日本語でフィリピンのことをいろいろ紹介してもらったよ。