考古学ノンフィクション

ユダの福音書を追え

ユダの福音書を追え

本書は1970年の発見から復元/翻訳がなされるまでの経緯がつぶさに記録されており、初期キリスト教をめぐる、コプト学などの学問や古美術の業界に関する雰囲気がよく伝わってくる良書だ。「ダ・ヴィンチ・コード」を生み出した昨今の初期キリスト教の研究が進んでいることを肌で感じることができる。
ユダの福音書」原典翻訳版は6月に発売されるらしい。本書はユダの福音書の写本に関するノンフィクションであり、ユダの福音書の内容はもったいぶって期待をあおるような書き方がなされているが、翻訳はついていない。ユダの福音書を読むことが目的であれば、買うべきではない。
ところで、この1990年代の死海文書騒動から始まった一連のブームだが、1970年代に書かれた面白い小説がある。イエスの古文書〈上〉 (扶桑社ミステリー)イエスの古文書〈下〉 (扶桑社ミステリー)だ。イエス実弟による福音書が発見されたという騒動を、一人の広告屋(1970年代なのであんまり現代的な観点からはインテリっぽくない好人物)の眼から描くミステリの秀作である。ちょっと時代のゲージをまわす必要があるが、彼が描いた聖書をめぐる状況は「ユダの福音書を追え」に描かれていることがらをリアルに、そしてドラマチックに描き出している。良書だ。