死人は生き返らない。宗教なら別だが……

コンピュータが専用機と化すことを読んでつらつらと考えた。
先日ちょっとした仕事で海外のDTPソフトをレビューする機会があったが、QuarkXPressの操作コンセプトを継承していてうれしくなってしまった。Spaceキーを使わないパンやズームは文字を扱うツールに必須のコンセプトだし、100ページほど流し込んでみたときの動作の軽快さもなかなかのものだった。
徹底してXPressと違う点は、このツールが現代のアプリケーションだと言うことだ。レイアウトイメージの実解像度プレビューは言うに及ばず、OTF、Unicode対応、PDF出力、他言語対応などなど、Mac OS Xの標準APIをきっちり使ったモダンなツールであったことだ。ああ、あの国ではこのようにXPress亡き後の状況に対応したのか。数年ほど気合いを入れて日本語組版を開発すりゃXPressオペレータは喜……いや、なんやかんやと言い訳つけて買いやしないんだろうな。売れなきゃ作る必要はないんで以下略。
で、Mac OS XDTP環境とInDesignだ。この環境はXPressを筆頭とする三種の神器の代替環境じゃない。いままでオペレータに書籍の設計を握り込まれていた上流工程で書籍設計をすべて終わらせるためのツールだ。設計に時間を割くように作られていて、実際の組版工程はXPressのオペレータほどコストの高い人材を必要としないようなワークフローを組むと最高のパフォーマンスが出る。引き出し線を引くためにIllustratorPhotoshopをがちゃがちゃ操作したり、XPressのちょっとした癖(数値精度が低いから100qのボックスを作るのに100.001qなんて入力したりする)を知悉している――「仕事してる感じ」を満喫するようなというと言い過ぎかな?――オペレータなしで書籍を作り上げる方法が提案されているんだ。このAdobeからの提案が実現するまでには何年か必要かもしれないけれど、つきあう価値は十分あるんじゃないだろうか?
DTPの各工程に精通していることは全然悪いことじゃない。デジカメから印刷までを一貫したコンセプトでカラーマネジメントできる知識や、Unicodeに入っていない外字が頭に入っていること、網点を読めること、検版の手法、作業の正規化、間違いの起こりそうな部分を察知する経験などは、InDesignに代表される「DTPに精通していない業界での制作」を大きく支援できる。
クライアントとなる企業はWindows Vistaの登場やWeb 2.0などで情報の取り扱いに大きな変化を迎えている。このような時期なら、特に90年代からやってるベテランならいくらでも提案できることはあるんじゃないか?経験豊かな、仕事が速いあなたたち。こっちへ来て一緒にやらないか?