下手な演劇のような……

妻と映画でも借りてこようかと話していたのだが、ジャン・レノ主演のミステリ、クリムゾン・リバー日曜洋画劇場でかかるというのでそちらを見ようということになった。ウチのテレビが字幕に対応してるかどうか調べるのも億劫だったので、久しぶりに吹き替えで映画を見たわけだが……吹き替え、っていうか声優が下手な演劇のようで若干萎えた。
いや、声優は上手いよ。ゲド戦記のアフレコと比べると芝居もしっかりできてるし、吹き替え用のスクリプトもアフレコも不自然じゃない。最近は吹き替え見てなかったんだけど技術向上してるなぁ。
でもねぇ、みんな年齢が同じなんだよ。老人も子供もみんな、働き盛りの大人が「演じている」声だったので脳内バイアスフィルタ使って鑑賞した。ま、面白かったよ。
アニメやゲームのアフレコで違和感を感じないのはアニメやゲームのスクリプトが要求する人物の幅がそんなに広くないからなんだろうな。日本のマンガをベースとしたコンテンツでは人物設定の幅を現実世界側に広げることよりも、緻密な世界館や物語、メッセージ性により傾注しているってことなんだろう。
とはいえ、映画の吹き替えだとそうはいかない。画面に見えているのはリアルな老人や子供をはじめ、監督が腕によりをかけてキャスティングした豊富なバリエーションの役者たち。往々にして吹き替えで鑑賞する映画の役者は、演技やエンターテイメント分野でエキスパートクラスの技術を持った生の人間だ。特に今回の『クリムゾン・リバー』はスケールが小さく感じてしまった。アメリカの映画だとあまり気にならないのは、ステレオタイプスクリプトと演出が多いから。
ジブリ映画でいわゆる「声優」を使わず役者を使っているのはこの「演じている感じ」がいやなんじゃないだろうか、なんて勘ぐってみたり。美輪明宏のような存在そのものが妖怪な女優(とあえて言わせていただく)を起用するセンスは、そこなんじゃないか。