「藁の盾」

藁の楯 (講談社文庫)

藁の楯 (講談社文庫)

先週の出張の際に裏表紙のアオリに惹かれて手に取ったが、昨日の福岡出張に持ち込み、機内で表紙を開いて驚いた。著者の木内一裕さんは「BE-BOP-HIGHSCHOOL」のきうちかずひろさんだったのか。

「生きる価値のない男」を守る。命を懸けて。
2人の少女を惨殺した殺人鬼の命に10億円の値がついた。日本警察史上、最も過酷な任務に投げ込まれた5人の男たち。「人間の屑」の楯になることを拒否した警察官たちが直面する絶望の果ての最悪とは!?
未曾有の殺意が充満する戦慄のサスペンス!
「この男なら殺せる」犯罪に心が麻痺した日本人に与えられた、公然と人を殺す「動機」。リストラ、倒産、年間自殺者3万人。追いつめられた人間が日本中に溢れている。喰えないヤクザ10万人。急増する外国人犯罪。凶悪化する少年犯罪。我が子を虐待死させる親たち。そして果てしなく続く警察官犯罪
全ての殺意が1人の男に向けられたとき、5人の警察官の孤独な戦いが始まった!
心の暗部を揺さぶり、良心を持つことの意味を問う、警察小説の枠を超えた緊迫のエンターテインメント!

主人公は妻に先立たれた男やもめのSPというハードボイルド小説にはありきたりの設定なのだが、回想を交えた描写が圧倒的なリアリティで描き出され、亡き妻の声が納得できない命令に従う主人公の高潔な行動規範へ昇華している。


あっさりとした描写ながら、人物の立ち位置まで浮かび上がるかのような的確さがあり、ストーリー進行が早い。書こうと思えばいくらでも内面描写や蘊蓄に傾けられるのだろうが、そのあたりは最小限に止めている。


行きの機内で一気に読み、帰りの機内ではほかの小説を読もうとしたのだけど「藁の盾」で味わった総天然色のリアリティとの差を埋めきれず、もういちど読み返した。なかなかこんな本には出会えない。