天の光はすべて星
天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4) (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4) | |
田中融二 早川書房 2008-09-05 売り上げランキング : 6096 おすすめ平均 僕にはこの本を読みこむ力がないと見える 合言葉は"星屑" フレドリック・ブラウンの2001年 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
素敵すぎるタイトルは以前から知っていたが、なぜか今まで手に取ることがなかった。素敵な表紙イラストとともに復刊された文庫を購入したのは一月ほど前になるが、先日の大阪出張の新幹線の車中で一気に最後まで読んでしまった。
舞台は木星行きロケットが可能な程度の近未来(古いSFではよくあることだけど年代的には過去となっている)。木製行きのロケットを飛ばす法案成立を目指す女性の上院議員に「星屑」を自認するエンジニアが接近するところから始まる。周囲に隠し続けているつもりの目的を果たすため、あらゆる手段を講じてロケット計画が実現するための手を打っていく主人公を描いた物語だ。
高価なロケット便がジャンボジェットの代わりに飛び交う設定などが少しはあるがSF的な道具立てや説明は最小限に抑えられているため、老齢のエンジニアの抱く焦燥や欺瞞、愛情が力強く描かれる。
セリフを用いた独白や説明も長くなってしまうあたりは時代を感じてしまうが、衝動を抱えた人間の思いに時代なんて関係ない。今でも十分に、いや、今だからこそ切実に主人公のエンジニアの焦燥と衝動は切実に感じてしまう。本書の世界で人類は金星と火星に足跡を残しているけれど、こちら側の世界ではいまのところ火星有人飛行の予定なんかないからな。
蛇足
再刊された本書のあとがきはこの再刊のきっかけとなったらしいアニメ作品の監督が書いているが、人の作品のあとがきで自作の宣伝やってるしょうもない文章だ。ダ・ヴィンチ・コードのあとがきにレックス・ムンディを宣伝してた荒俣宏みたいなもんか。
こんなしょうもないあとがきが載っている版でないものを買い直しておこうかな。